「見込み客がなぜ売り上げにつながらないのか?」この問いは、営業部門とマーケティング部門の間の長きに渡る闘いです。
化学・材料業界のサプライヤーのお客様によく見られるのは、マーケティングチームが「営業担当者が見込み客をフォローアップしていない」と不満をもらすケースです。一方で、営業担当者はマーケティングによる質の低いリードは時間の無駄だと反論します。そしてこの闘いが絶え間なく続いています。
長年にわたりお客様のデジタルプログラムを管理してきたなかで、弊社は、化学業界サプライヤーのリードコンバージョンに悪影響を与える、5つの起こりがちな過ちを見つけました。
この記事では、マーケティングと営業の歴史的な闘いに終止符を打つための、特殊化学業界に合わせたベストプラクティスと実践的なアドバイスをご紹介します。
理由 その1:定義が不明確で食い違いがある
一般に、「見込み客の定義とは何か」に関して、営業とマーケティングチームとの間で、双方の合意がなされていません。実際、リードコンバージョンファネルの他のステージについても同じことが言えます。
リードから顧客に移行するまでの各ステージについて、部署ごと、最悪の場合は、個人ごとに、別々の独自の定義を持っていることがよくあります。
そこで、営業とマーケティング部門の同僚に、「見込み客とは何か」を聞いてみてください。答えを聞くと、社内でどれほど食い違いが大きかについて理解することができるでしょう。これは些細なことではありません。これが、リードコンバージョンの効率が悪い第一の理由かもしれません。
リードコンバージョンのファネルの各ステージには明確な意味があり、具体的な行動を促す必要があるため、同じ枠組みのなかで一緒に仕事をすることが極めて重要です。
スペシャルケムが最初にお勧めすることは、社内の全員が同じ定義を共有し、また、最も重要なこととして、社内全体で理解されているかを確認することです。
スペシャルケムでは以下のステージ区分を用いています。
- 訪問者 (Visitor):見知らぬ人が貴社のコンテンツやウェブサイトに訪問した場合。
- 見込み客 (Lead):既知の訪問者が、少なくともメールアドレスと氏名を共有した場合。
- マーケティング活動で得た見込み客 (Marketing Qualified Lead - MQL): 貴社のソリューションや会社について興味を持った、貴社のターゲット層の見込み客。
- 営業活動でフォローすべき対象となった見込み客 (Sales Qualified Lead - SQL): バイヤーのペルソナにマッチし、実際のプロジェクトの存在を評価することで、さらに適格性が高まった MQL。
- オポチュニティ (Opportunity):評価後に「インターゲット」「インプロジェクト」と判定された SQL。
- プロジェクト:新製品や試作品を開発するために、双方が多額のリソースを投入する機会のこと。
- 顧客・カスタマー:この説明は不要ですね。
豆知識:数年前、スペシャルケムは、見込み客のクオリフィケーションと「オポチュニティ」ファネルの管理を含む大規模なデジタルマーケティングプログラムを通じて、大手ポリマー製造企業に「オポチュニティ」を生み出していました。しかし数か月後、「オポチュニティ」から「プロジェクト」への転換率は期待外れのものでした。プロセスを詳しく見てみると、同社では、「オポチュニティ」を「リード」として CRMシステムに取り込んでいたことがわかりました。この「リード」という定義では、誰も「プロジェクト」に転換するためのフォローアップを率先して行っていませんでした。
理由 その2:クオリフィケーションのプロセスがない
フォローアップをする前に、MQL から SQL へのクオリフィケーションを行わなければ、最初からコンバージョンに悪影響を与える可能性があります。
特殊化学品メーカーでは、 すべてのリードを営業担当者に送るという悪い習慣が未だに残っています。
その昔、営業が新規ビジネスを成立させるためのリードを生み出す役割を担い、マーケティングはブランディングとコミュニケーションのみを担当していました。このような過去の考え方では、「リードはビジネスチャンス」という発想につながりますが、デジタルバブルが崩壊した後、多くの物事が変化しました。
今日、見込み客は皆同じではありません。間違えてコンテンツを訪れた人から、サンプルを請求してきた人まで、リードの関与のレベルは大きく違いがあります。リードスコアリングとクオリフィケーションが、リストの中で最も価値があり、関与度合いの高い見込み客を選別する重要なプロセスになります。
さらに、リードのリストを営業チームに送っても、営業チームがそのリードをフォローアップする際の優先順位は、通常、非常に低いものです。
営業チームは現在購入されているお客様の管理や提案、契約締結などに追われています。せいぜい、知り合いの企業のリードに連絡を取ったり、サンプルや技術的な問い合わせに対応したりする程度です。それ以外については、営業担当者に紹介メールを送っても彼らは反応せず、それ以上の行動を起こさないかもしれません。時間があるときにだけ行動を取るでしょう。1週間以内かもしれないし、1か月以内かもしれません。リクエストを送ってから1週間後に返答してくるサプライヤーと、あなたは仕事をしたいと思いますか?おそらく、答えは「いいえ」でしょう。
理由 その3:説明責任を担う組織がない
リード変換プロセスがなければ、担当する組織も必要ありません。これは、理由その2の直接的な結果です。
リード変換プロセスをマッピングし、責任の所在を、「何を、誰が、いつ、どこで、なぜ」に合わせて割り振らなければなりません。
効果的な組織を構築するためには、リード変換ファネルの各パートに、以下のような役割と責任を分担することができます。
- マーケティング担当者:見込み客獲得 / TOFU
- インサイドセールス:MQL から SQL への変換 (このうち一部は「オプチュニティ」となる) / MOFU
- 営業:「オポチュニティ」の管理 / BOFU
- プロセスマネージャー:組織の管理、プロセスの監視と改善
よくある間違いは、洗練された CRM がリード変換プロセスの代わりになると考えてしまうことです。CRM は優れていますが、上記のような定義された「役割と関連する行動」のプロセスに取って代わるものではなく、単にリードやオポチュニティのステージの状況を把握できるようにするものです。
理由 その4:リード変換プロセスに KPI がない
「見込み客が売り上げに結びつかない!」 何百人もの営業、マーケティング、事業部長から聞く言葉です。この言葉はすべてを表していると同時に、何の意味も表していないともいえます。
問題は見込み客でしょうか?変換プロセスでしょうか?あるいは、その過程で生じていることでしょうか?
ほとんどの場合、苦情を言っている人々は、その理由を説明できません。なぜなら、信頼できる指標がないからです。
リード変換をモニターするために、以下の3つの KPI に注目することをお勧めします。
- 数量: ファネルの各ステージ (TOFU、MOFU、BOFU) のリード数
- コンバージョン率: 1つのステージから次のステージに進むリードの割合
- 変換までにかかる時間: あるステージから次のステージに移るまでの平均時間
理由 その5:プロセスから学ばない、または改善されない
測ったものしか改善はできない。この有名な言葉は、リード変換を向上させたい場合にぴったり当てはまります。
適切な KPI を測定する
以下のような適切な KPI を設定することで、プロセスの障害を特定し、是正措置を講じることができます。
- 数量:ファネルの各ステージで、十分な数のリードが得られていますか?ファネルのトップで、もっと多くのリードを獲得する必要がありますか?
- コンバージョン率:リードを次のステージに移行させる前に、必要な情報のすべてを集めていますか?評価基準が厳しすぎる、または緩すぎることはありませんか?
- 変換までにかかる時間:プロセスを遅らせているのは、どのステージ、または行動ですか?これを効果的にするために何ができますか?どのくらいの速さでサンプリングしますか?見込み客はどのくらいのペースでテストしますか?見込み客がテストでプラスの反応を示してからどのくらいの期間で購入していますか?このように整備された仕組みがあれば、ある市場や用途の領域が、他の領域よりも早く変換するかどうかを分析することもできます。
コンバージョン率の分析
コンバージョン率の分析には注意が必要です。見たいものだけを見てしまうという傾向に陥りがちだからです。たとえば、
コンバージョン率が高すぎる場合:「見てください、この私たちの優れた成績を!」、 これは早計すぎるかもしれません。
- 緩すぎる 評価基準がステージに設定されていると、効果がありません。
- 厳しすぎる 評価基準がステージに設定されていると、それ以降が無駄になります。
コンバージョン率が低すぎる場合:「現れるのは、あくまで現実のビジネスだけだ」、 そうとも限りません。
- 厳しすぎる 評価基準は、多数のリードの次のステージへの移行を妨げる可能性があります。せっかくの貴重なリードを早々に無効にしてしまっては元も子もありません。
- 拙速にリードを次のステージへと移行させている。必要な情報をすべて集めていること、そして次のステージへ移行させる適切な時期であることを確認してください。上記のコンバージョン率が高すぎる場合と同様に、すべての動きが、その後に続くステージに影響を及ぼします。
ベンチマークを追跡する
「ベンチマークを設定していますか?」これは、スペシャルケムのほとんどのお客様から聞かれる質問です。
弊社では典型的なベンチマークを設定しており、共有できます。しかし実際には、重要なのは貴社自身のベンチマークだけです。今回ご紹介したヒントを実行された後は、スタート地点でのベンチマークと、定められた期間での進捗状況の測定を行ってください。貴社の製品、市場、バイヤーのペルソナは貴社に固有のものであり、オポチュニティから売り上げに至るまでの時間も貴社に固有のものです。ベンチマークし、測定し、改善しましょう。
スポーツの初心者とベテランのアスリートに、同じ上達法のアドバイスをしますか?当然、しないと思います。話題は違っても、理屈は同じです。
効果的なリード変換のプロセスを構築することは、さほど難しくはありませんが、最初は複雑に思えて圧倒されてしまうかもしれません。一歩一歩進めていくことをお勧めします。これが、スペシャルケムが20年以上にわたり、化学業界サプライヤーのリード変換プロセスをアドバイスし、実施してきたことです。
貴社自身のペースで進めましょう。チームを集め、共通の定義を共有し、責任を明確にします。そしてプロセスの各部分を時間をかけて測定し、改善することを忘れないでください。